永谷正樹の「俺の写真をパクるな!」その19・「著作権者はナガヤではない」と相手方が主張したせいで裁判は泥沼化。こんな理不尽なことがまかり通ってたまるか!

 フードカメラマン兼ライター(株式会社つむぐ代表)の筆者と “写真泥棒” との戦い。新たな裁判は初っ端から意外な展開に……。
nameken 2025.12.13
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私の訴状と相手方弁護士からの答弁書

 去る11月27日(木)、私が撮影した味噌煮込みうどんの写真を自社のECサイトと郵便局「ふるさと小包」、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」で無断使用していた製麺会社との裁判が名古屋簡易裁判所で行われた。

 その結果は後ほど書くとして、まずは私の訴状と相手方弁護士から届いた答弁書について触れておきたい。

 裁判において私が製麺会社に求めたのは以下の2点。

1 被告(製麺会社)は、原告に対し、金76万円を支払え

2 訴訟費用は被告の負担とする

 76万円の根拠は、以下の通り。

 私が定めている1日あたりの広告撮影料金8万円 ✕ 2つのサイト(自社ECサイト、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」)✕ 無断使用の損害金2倍で32万円。

 郵便局「ふるさと小包」は無断で写真をトリミング加工しているため、撮影料金8万円 ✕ 損害金を3倍として24万円。

 示談交渉を依頼した弁護士に支払った着手金20万円。

 32万円+24万円+20万円=76万円

 一方、相手方弁護士の答弁書に書かれていたのは以下の2点。

1 原告の請求は棄却する

2 訴訟費用は原告の負担とする

相手方弁護士からの答弁書

相手方弁護士からの答弁書


 まぁ、予想はしていた。弁護士は負けるとわかっていても依頼人を弁護せねばならないのだ。確固たる証拠を目の前に突き出しても弁護士は「依頼人は否定している」と主張せねばならない。それが仕事だから。にしても、「原告の請求は棄却する」ったぁ言いぐさは何だ!?

写真の無断使用は過失割合10対0の交通事故と同じ

 ちょっと冷静に考えてみよう。

 私はクライアントからの依頼を受けて、店の公式サイトとメニューブックに使用する写真を撮影した。

 私にもクライアントにもまったく無関係の製麺会社は、無断で自社のサイトと郵便局のふるさと小包などに自社の商品の画像として掲載した。

 これが事件のあらましである。

 いかがだろう。この時点で私、そしてクライアントに落ち度はあるだろうか?

 あるとしたら、クライアントが仕事を発注したことと、それを私が請けたことか。それらがなかったら、写真を盗用されることもなかったわけだし。

 って、アホか(笑)。どこにも落ち度はないでしょうよ。

 交通事故に例えるなら、信号で停車している車に乗っているのが私で、猛スピードで追突してきたのが製麺会社である。

 この場合、過失割合は10対0。つまり、製麺会社が全面的に責任を追わねばならない。にもかかわらず、「車の修理代やケガの治療費を請求するな」と言われているようなものである。こんな理不尽なことがあってよいはずはない。

いちばん腹立たしいのは製麺会社社長の態度

 答弁書には訴状に対する相手方の言い分が一つ一つ書かれていた。これらが「原告の請求を棄却する」ための根拠というわけだ。例えば、「無断使用の損害金を撮影料の2倍とした根拠を示せ」と。では、逆に聞くが、泥棒が盗んだものを返せば無罪放免となるのか。

 著作権侵害や著作者人格権侵害は犯罪である。刑事告訴することもできたが、大事にしたくなかったからだ。まさかここまで話が通じない相手とは思わなかったし。今となっては少し後悔している。

 私がいちばん腹立たしく思っているのは、謝罪する機会があったにもかかわらず、ただの一度も連絡を寄こさなかった製麺会社の社長の態度である。示談交渉中であっても、弁護士を通じて「直接謝罪したい」との申し出があれば、裁判を起こす必要もなかったのだ。

 ちなみに写真を無断使用されてから丸4年が経とうとしているが、社長とは会ったこともなければ、話したこともない。それどころか、弁護士を通じて「謝罪は済んでいる」「業績が芳しくないから賠償金を払えない」と言ってきた。その言葉に私がどれだけ不愉快な思いになったのかわからないし、わかろうともしない。

 おそらく、今回の裁判も弁護士に丸投げだろう。そうなると、どうしても私の態度は強硬にならざるを得ない。しかし、社長が自ら裁判所へ来て、これまでオノレがやらかしたことを認めて、素直に詫びてくれれば話は別だ。私だって別に賠償金が欲しくてやっているわけではない。人が生きていく道として、それはおかしいだろと言いたいのだ。

シャッターを押した瞬間から写真の著作権は生まれる

 で、裁判当日。居酒屋運営会社との裁判で使った会議室のような小ぢんまりとしたところではなく、テレビや映画で見たことのある広々とした、いかにも法廷という場所で開かれた。私の目の前には相手方弁護士だけ。やはり、社長は姿を現さなかった。となれば、とことんやるしかない。そう腹を決めた。

 裁判官から私と相手方弁護士に訴状と答弁書に間違いはないかを尋ねられ、「間違いありません」と答えると、裁判は意外な方向へ進んだ。

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