石黒好美の「書く福祉」・なぜ、専門知識のないボランティアにも「ホームレス支援」ができるのか?
名古屋市内には16の区役所がありますが、その全てを訪れたことがある人はあまりいないのではないでしょうか。私はありますね。
いきなり何のマウントなんだよ? という話ですが、私はいま名古屋で野宿生活をされている方や、いわゆるホームレス状態にある方、生活に困っている方を応援する活動をしている団体、NPO法人ささしまサポートセンター(SSC)で働いています。SSCに寄せられる相談の中には、生活保護申請をしたいとか、生活保護を利用すると暮らし向きがよくなりそうだ、という内容が多いので、相談者さん本人と一緒に区役所に行くことが多いのです。

名古屋市中村区にあるささしまサポートセンターの事務所=筆者撮影
ボランティアが生活保護申請の同行をしています
とはいえ年間何百人という方からの相談を受けるので、全員が区役所に行くわけではないにせよ、私がひとりで生活保護申請の同行を引き受けているわけではありません。じゃあ、誰がやっているかというと、ほとんどがボランティアさんなんです。
この記事を読んでいる人の中には、生活保護申請をした経験のある人もあまりいないのではないでしょうか。私はあるんですけどね。(自分のではないが)
日本でいま生活保護を利用している人は約197万人、全体の1.6%(厚生労働省 生活保護の被保護者調査(令和8年7月分概数)より)ということですから、ほとんどの人はどうやって生活保護を申請すればいいのか知らなくて当たり前なんですよね。
多くの人は生活に困って初めて生活保護について調べるのですが、出てくる情報は玉石混淆。一人で行くと水際作戦にあうとか、根掘り葉掘りいろいろ聞かれるとか、若くて働けるからダメと言われたとか、○○だからダメだと書いてあると不安になってしまうものです。そこで、私たちSSCのボランティアが一緒に窓口に行って、申請のお手伝いをするというわけです。
ボランティアの人に生活保護申請の同行ができるの? 知識がなくても大丈夫なの? とよく言われますが、それが大丈夫なんですよ。
確かにベテランのボランティアさんは長年の経験でいろんな知識を得ているのですが、それほどでもない若手が同行して「うまくいかなかった」「大変なことになった」ということもありません。私も初めて生活保護申請の同行をしたときは、福祉関係の資格は何も持っていませんでした。
ふだんからある程度の情報共有をしており、困ったときには電話で他の職員やボランティアに相談できるから、というのもあるのですが、生活保護についてよく知っている人がついて行くからうまくいく、というものでもないのだなと感じます。
じゃあ、申請に同行する人は何をしているのか? というと、ほとんど何もしていないこともあるんです。私もついて行って、窓口で隣に座っているだけで無事に終わりました、ということが少なくありません……。ならば同行しなくても、一人で行っても同じなのでは? と思われるかもしれないですが、それは違うんですよね。
一人で行くと役所の人に言いくるめられてしまうのではないか。自分の言いたいことが言えず、聞きたいことも聞けないのではないか。本当に申請できるのだろうか。怠けていると怒られてしまうのではないか……。そんな不安と心配で足がすくんでしまっている人も、「一緒に行ってくれる人がいる」というだけで窓口まで来ることができるのです。
実際に生活保護申請を始めると、思っていたよりもずっと役所の人は物腰が柔らかく、親身になって話を聞いてくれることがあります。隣に座っている私も、役所の前で待ち合わせをしていたときにはガチガチに緊張していた人の表情が少しずつ柔らかくなっていくのがわかります。不安が強く、人とうまく話せないと言っていた人が、わからないことや気になっていることをすすんで聞いたり話したりされる姿も何度も見てきました。
「隣に自分の味方がいる」というだけで、人は持っている力をこんなにも発揮できるものなのだと感じます。仕事や生活がうまくいかず、心身ともに疲弊して相談に来られる方が多いですが、もしかして「自分の味方だ」と思える人が身近にいなかったために、力を出せなかったのかもしれないなあ、とも。
もちろん高圧的な物言いの職員には抗議しますし、申請するご本人が「?」となっているときには、もう一度説明してもらうよう頼んだりもします。それも専門知識があるからできるというよりも、「そんな言い方はひどいんじゃない?」とか「その説明だと私もよくわからないから詳しく教えてほしいな」という、いち庶民の感覚を生かしている、という感じです。
助けるでもなく、代わりに解決するでもなく
生活保護申請の同行だけではなく、SSCでは生活の相談もボランティアがやっています。医師や看護師、社会福祉士といった専門知識のある人もいますが、ふだんは福祉や医療とは関係ない仕事をしています、という人も関わってくれています。

