石黒好美の「書く福祉」・複業ライター宣言

 ライター/社会福祉士の筆者が、モヤモヤした福祉界隈を中心に書くエッセイ。今回はいつも以上にリアルなお仕事の話です。
nameken 2025.08.30
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 東山公園の個性派書店ON READINGで、その名も『複業ZINE』(タバブックス)というZINE(個人や小規模グループが制作する自主出版物)を見つけたので買ってみました。

購入した『複業ZINE』(筆者撮影)

購入した『複業ZINE』(筆者撮影)

 なにか「メイン」の仕事があってその傍らで行う「副」業ではなくて、いくつもの仕事を並行して行う「複」業。そんな「複業」をしている13人に、どんな仕事をどんな風に行っているのかを聞いてまとめたものです。目次を見るとこんな感じ。

 ・フリーランスフォトグラファー ✕ ライフワークの撮影や活動 ✕ アルバイト 

 ・僧侶 ✕ 非常勤講師 ✕ マーケティングの業務委託

 ・介護職 ✕ イラスト制作や在宅ワーク ✕ フリマアプリ出品 

 ・編集者、ライター ✕ 古物商 ✕ 夜間救急受付  

 ・出張保育 ✕ お弁当販売 ✕ アート・デザイン活動 

 ・作家アシスタント ✕ フリーライター、編集者 

 ・ブランド・店舗運営×図書館カウンター ✕ 清掃 ✕ テニスコートの整備 

 ・ライター ✕ ベビーシッター ✕ ペットシッター ✕ うさぎ専門店のバイト 

 ・ライター ✕ コミュニティマネージャー ✕ ラジオパーソナリティー ✕ イベントMC ✕ カメラマン ✕ ハウスマスター ✕ 一日カフェ店員など 

 ・空調メンテナンス会社 ✕ アーティスト ✕ 書籍の蒐集家 

 ・会社員 ✕ 韓国語通訳・翻訳・コーディネート  

   ・コンサルティング事業 ✕ 訪問介護事業 

   ・本屋 ✕ 町議会議員 ✕ 田畑 ✕ 執筆 

 複業する理由も人によってさまざまで「一つの仕事では食えないから」という人も多いけれど、「いくつかの仕事をすることによる相乗効果を狙って」とか、「関わる人の幅を広げたい」というのもあった。「一つの仕事だけに全振りすることのリスクを感じる」という人もいて、分かるなあと思ったり。

 目次を見ても「ライター」や「執筆」をしている人が多い。出版社の人が声をかけやすい人選だったというのもあるのだろうけれど、やっぱりライティングだけで食っていくのが難しいというのも現実なのかなと思う。かく言う私ももちろん複業しています。

 出版社や新聞社や編集プロダクションで働いた経験もなく、何のアテもなくいきなり会社を辞めた自分に食えるほどのライティングの仕事が来るはずもなく。それでも稼がねばならなかったので、当時はNPOの事務とか、知り合いから人づてに頼まれる仕事はライティングと関係あろうとなかろうと、何でもやっていました。しかし、最初だけではなくて独立して何年も経ってもずっとバイトしていることを恥ずかしく感じ、本当にこれでいいのだろうか、フリーライターなんて名乗っているけれど、実際はフリーターだよね? 売れてないだけだよね? なんて思うこともしばしばでした。

 でも、あの骨太な医療系の調査報道で知られる岩永直子さんでさえイタリア料理店でバイトしていると知ると「自分がライティング一本で食っていくなんてそもそも無理じゃない?」と急に肩の力が抜けた気がしました。そもそもフリーターで何が悪いんだっけ? 自分には養わなければならない家族もいないし、私一人が食えているならその食い扶持について他人にどうこう言われる筋合いもないし。身近な諸先輩方たるなメ研のメンバーだって複業しているもんな。カメラマンしながらWEB制作会社を経営したり、ライターしながら歴史の講座の講師をしたり、報道カメラマンと市会議員の二足のわらじを履きこなしている人もいる。ギャラが安くて生活を成り立たせにくいという面を置いても、昨日はこの人、今日はこの会社、明日はまた別の取材、といろんなクライアントから依頼を受けるスタイルだと、ライターとかカメラマンという仕事自体が「複業」っぽくなりがちなのかもしれないなと思います。

AI(Adobe Firefly)に聞いたら出てきた「複業ライターのイメージ」。できるオンナのイメージ? でもかなり事務系?

AI(Adobe Firefly)に聞いたら出てきた「複業ライターのイメージ」。できるオンナのイメージ? でもかなり事務系?

 『複業ZINE』の表紙にはこうあります。『暮らせないからふつうの複業。「おもしろい」と「しかたない」にはさまれた、複業の現在』――本当にそうだなあと思う。私もいろんなバイトをしているけれど、収入がないから仕方なく、という面もあれば、単純にどれも面白いし、ライター業にもよい影響があるし、逆にライターの経験が別の仕事に役立つ、ということもあるし、何より飽き性で一つのことを続けるのが苦手という自分にすごく合っていると感じることもあるのです。

 「仕事」について書かれたものはいろいろあるけれど、夢ややりがいを持って熱く仕事に打ち込み、その人なりの成功を収めるというものや、逆に昨今の社会情勢も相まって過酷な労働現場での搾取されぶりというか、働けど暮らし楽にならざり、という状況を糾弾するようなものが多いなと思います。

 でも、実際に働く人たちの多くはそのどちらでもないというか、どっちでもあるのでは、と思います。そこまで打ち込めるわけではないけど、やっていれば面白いこともあるし、明日会社行くの嫌だなあと思うけど、まあ行ったら行ったでいいこともあるし、くらいの……。上昇志向を持つこと、真っ当な待遇で働けることは本当に大切だと思うけれど、ぬるっとゆるく、「そこそこ」や「ぼちぼち」で働くことだって、そんなにけなされるものではないはず。むしろ労働との間に「そこそこ」くらいの距離を持っていることで、搾取にNOと言えたりと、職場環境を冷静に見て改善できたりすることもあるかもしれない。そして「複業」的スタンスはそれを可能にしやすい働き方なのかも、と思ったのでした。

私のリアル複業スタイルはこれだ                                         

 せっかくなので、今回は私も『複業ZINE』にあやかって、同じように下記の質問に答えながら複業ぶりを公開したいと思います。

Q1.現在、どのような複業をしていますか。それぞれの仕事内容を教えてください。

Q2.複業をするに至った理由を教えてください。

Q3.複業、あるいは仕事において求めることはなんですか。

Q4.それぞれの仕事にかけている時間を教えてください。

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