石黒好美の「書く福祉」・「ホームレス支援」ってどんなことをしているの?

ライター/社会福祉士の筆者がモヤモヤした福祉界隈を中心に書く連載。生活困窮者支援のNPO法人事務局長として、ますます現場のリアルを発信します。
nameken 2026.05.09
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 先月のニュースレターでお伝えしたとおり、この4月からNPO法人ささしまサポートセンターの常勤職員/事務局長になりました。前回の記事を買っていただいたり、団体に寄付をしていただいたみなさん、本当にありがとうございます。勇気が100倍になりました。

 この1カ月間、炊き出し会場に行ったり、夜回りに参加したり、事務所の近所の豊国神社のお掃除ボランティアをして早くも蚊に刺されたり(しかも顔に)、はたまたラジオに出て団体の宣伝をしたり、決算や総会の準備にあたふたしたりと、毎日それはそれは楽しく過ごしています。

 今回は、このような仕事をしていると友人知人からよく聞かれる質問におこたえしていきたいと思います。(記事の内容は私個人の見解に基づくものであり、所属組織を代表するものではありません)

ささしまサポートセンターが活動開始から50周年ということでCBCラジオの取材を受けました。団体のPRになることは何でもします(5月2日、9日オンエアの「であい ふれあい 探検隊 !!」で。右端が筆者)

ささしまサポートセンターが活動開始から50周年ということでCBCラジオの取材を受けました。団体のPRになることは何でもします(5月2日、9日オンエアの「であい ふれあい 探検隊 !!」で。右端が筆者)

Q1.ホームレスってどんな人なの? どうしてホームレスになるの?

 ささしまサポートセンター(SSC)は活動開始当初から路上で生活している人たちを応援する活動をしてきました。「今も公園とかで寝ている人っているの?」とか「どうして屋根のあるところに住まないの?」「どうしてホームレスになるの?」などなど聞かれることがあります。

 ちなみにSSCなどほとんどの支援団体では定まった住まいがなかったり、路上などで生活している人たちを「ホームレス」とはあまり呼びません。言うとしたら「ホームレス状態にある人」とか「路上生活をしている人」とかでしょうか。それぞれの人には石黒さんとか関口さんとか固有の名前があるわけで、「ホームレス」という属性でひとまとめにしたくない、一人ひとりと向き合う関わり方をしたいという思いが呼称にも込められています。

 なので「ホームレスってどんな人?」という問いは「会社員ってどんな人?」「どうしてサラリーマンになるの?」と聞かれているのと同じなので「人それぞれだと思いますけど……」としか言えないのですが、それだと話が終わってしまうので続けますね。

 昔よりは減りましたが、現在も公園や高架下、河川敷などで寝起きされている方はいらっしゃいます。2026年4月に発表された厚生労働省の調査によれば、同年1月時点での名古屋市内の「ホームレス数」は77人とのことです。夜回りなどをしている人によれば、この倍はいるのではという声もあります。市役所の方などが目視で数えているので、集計のタイミングで仕事に出ていたり、そもそも調査エリアに居なかったりしてカウントされないこともあるのだと思います。

 仕事といえば、路上で暮らしている人たちはほぼ働いています。空き缶を集めて売ったり、土木や建設の現場に出ていることが多いです。年末年始の越冬活動の会場づくりで、テントを建てたりパレットを運んできたりという作業をテキパキこなしみんなに指示を出しているのは、建設現場でのノウハウや技術を持っている路上生活の人だったりします。


越冬活動の会場設営に路上生活を通した知恵が生かされている=筆者撮影

越冬活動の会場設営に路上生活を通した知恵が生かされている=筆者撮影

「家がある人」もホームレス状態に

 一方で、最近増えてているのは「家がある人」からの相談です。

 製造業の一大拠点である愛知県の特徴か、「派遣社員として工場で働いているが、次の仕事が見つからない」というSOSも多いです。派遣会社の寮で暮らしていると、失業と同時に家もなくなってしまうわけです。

 また、「想像していたよりもずっと重労働で、期間満了の前に体調を崩して働けなくなってしまった」といった相談も珍しくありません。関西や九州、東北など遠方から愛知に来て身近に頼れる親族や知人もおらず、次の契約は更新されるのか、更新されなかったら別の仕事は見つかるのか、見つからない場合はどこに住めばいいのか……といった不安を抱えつつ、時間的にも体力的にも厳しい労働に従事するというのはどれだけ心身に負荷がかかることかと想像します。私たちは名古屋市内で活動していますが、豊田市、岡崎市、安城市といった三河地方や小牧市、犬山市といった市外からの相談もあり、各地の支援機関とのつながりを深めていくことが急務だと感じています。

 家族との関係が悪く家を出たいとか、あるいは「親や子どもが生活に困っているので助けてもらえないか」といった親族からの問合せを受けることも増えました。非正規雇用が増え、なかなか賃金も上がらない中、家庭から「人を支える力」が急激に失われつつあります。

 さらに、名古屋市内ではほとんど毎日どこかで炊き出しや食品の配布が行われているのですが、いまそこに並んでいる人たちの8割から9割は「家がある人」です。年金や生活保護を受給しながらアパートなどで暮らしているけれど生活が厳しく、炊き出しを頼みの綱にされている方が増えています。そもそも年金や生活保護費の金額自体が十分とは言えない上に、(しかも生活保護に関しては違法に基準が下げられているし)昨今の物価高が追い打ちをかけています。

若宮大通高架下の炊き出し会場。毎回100~180人くらいが列をなす=筆者撮影

若宮大通高架下の炊き出し会場。毎回100~180人くらいが列をなす=筆者撮影

Q2.そういう人たちに、どんな支援をしているの?

 こうやって書くと現場はなんて悲惨なんだ、大変なんだと思われるかもしれないですが、……うーん、実際、本当に大変なんですけど、それぞれに葛藤や紆余曲折はあるのものの、上記の人たちのほとんどは「何とかなる」ものです。

 一定の収入や資産がない人であれば誰でも生活保護が利用でき、住まいや医療へのアクセスも確保できます。その他にも年金とか失業保険とかさまざまなセーフティネットはありますし、役所の生活保護の窓口以外にも生活の相談ができるところが増えました。

 では、なぜSSCのような「支援」が必要なのでしょうか。窓口に行って相談なり申請なりすれば、必要な制度は利用できるのだから、さっさと行けばそれで済むわけじゃないですか。

困っているのは「頑張ってきた人」

 いま相談に来られる人の多くは、自分が「支援される」対象だと思っていなかったり、自分が「支援されていい」「助けてもらってよい」とは思っていないんですね。

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