【特別寄稿】畠山理仁が見た名古屋市長選2024(&兵庫県知事選&台湾総統選)
既存政党が展開する「組織型選挙」の限界を見る思いだった。
11月24日、史上最多タイとなる7人が立候補した名古屋市長選挙の投開票日。筆者は「THE PAGE(ザ・ページ)」のYouTubeチャンネルで、午後8時から生中継が始まる広沢一郎事務所の様子を視聴していた。
投票箱閉鎖と同時に配信が始まると、すぐにNHKが「広沢一郎氏当選確実」の報を打った。画面上ではすぐに広沢氏や河村氏がステージに上がり、支援者とともに当選を喜んだ。そして前市長である河村氏が当選時に行ってきた「バケツに入った氷水をかぶる儀式」も広沢氏に引き継がれた。その後の共同インタビュー、河村氏のコメントも含め、配信はわずか17分で終了。あまりにもあっけない幕切れだった。
“二馬力選挙” が組織を圧倒
当選した広沢一郎氏の得票は39万2519票(得票率53.4%)。2番手となった大塚耕平氏の得票は26万1425票(得票率35.6%)。2人とも無所属での立候補だったが、広沢氏は日本保守党と減税日本の推薦を得ていた。一方の大塚氏は自由民主党、公明党、立憲民主党、国民民主党の推薦を得ていた。それでも13万1094票もの大差がつく結果となったのは、広沢氏が掲げた「河村たかし後継!」のメッセージや、河村氏を伴った選挙戦、二人で写ったポスターやビラなどの“二馬力選挙”が功を奏したからだろう。
各社がゼロ打ちに踏み切った理由の一つと考えられるのは投票率の低さだ。今回の名古屋市長選挙における投票率は39.63%(前回42.12%から2.49ポイント減)。投票率が低いのは、従来の支持者以外が選挙に行かなかったからだろう。つまり、今回は無党派層が動かなかった。これが冒頭に「組織型選挙の限界」と書いた理由だ。
これはほぼ同時期(10月31日告示・11月17日投開票)に行われた兵庫県知事選挙の投票率55.65%(前回41.1%から14.55ポイントアップ)とは大きく事情が異なる。兵庫県知事選では、選挙戦終盤で一気に斎藤元彦候補へのビッグウェーブが起きた。筆者も現地で取材したが、当選した斎藤氏の最終盤の集会には千人を超える人が集まり、勢いに圧倒的な差があった。そこには老若男女を問わず「初めて選挙に参加する」と表情を輝かせる人たちがいた。筆者はこうした人たちを「政治的初恋の渦中にいる人」と呼んできたが、名古屋でそこまでの盛り上がりを確認することはできなかった。
候補者を直接見ない有権者
候補者の中には動画やSNSを使って「運動を外に広げよう」「新しい人たちに呼びかけよう」と努力した人もいた。しかし、そもそも選挙への興味を喚起できなかった。それは各候補の動画再生数を見れば明らかだ。