フリーこそやるとイイ!! 裁判取材のススメ・関口威人の「フリー日和 (⌒∇⌒)□」その9

 なメ研代表理事/ジャーナリストの関口がフリー稼業の裏側と、ゆるりとした生き方について記します。
なごやメディア研究会 2023.09.09
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 先週は朝から夕方まで、名古屋地裁で裁判を傍聴していた日がありました。

 「京アニ」ほどの大きな事件ではまったくなく、形としては数千万円のお金を巡る民事訴訟なのですが、原告はその業界では知らない人がいないほどの大家、被告はこの地域でよく知られている大学の運営組織。その背景には愛知県・名古屋市の事業が絡んでいます。当日は原告、被告双方の計4人に対して証人尋問や本人尋問がありました。

 双方の主張がバチバチに対立してスリリングでしたが、その分まだ記事にしにくい状況。取材しているのは僕だけということもあり、判決が出てからしっかり記事にしたいと思っています。

 ところで、裁判所というのはなじみのない人にはまったく近づきがたい世界かもしれません。僕も新聞社時代はメインの担当(司法担当)になったことはなく、たまに応援取材で行く程度でした。むしろフリーになってからの方が、大小の裁判を取材する機会が増えました。

 そうやってみて分かったのは、フリーこそ裁判取材をするべきではないかという結論です。どういうことかを、これまでの取材経験や各方面との駆け引き(暗闘?)を交えてまとめてみます。

名古屋地方裁判所の入り口(2021年11月17日、関口威人撮影/NAMEDIA)

名古屋地方裁判所の入り口(2021年11月17日、関口威人撮影/NAMEDIA)

当事者の肉声を聴いて事件発覚から判決までを見届ける

 裁判取材の醍醐味は、当事者の肉声を生で聴けることです。

 記者なら当事者の声を聴くのは当たり前と思われるかもしれませんが、これが意外と難しいんです。特に警察による逮捕などの発表からスタートした事件では、当事者の身柄が警察側にあり、めったなことでは直接アクセスできません。

 事件記者は基本、警察や検察側から容疑者の供述を間接的に聴き出すことになります。(イレギュラーなケースとして昨年、JRの無料パスを不正使用した元国会議員を拘置所で“直撃”できたことはありましたが)

 そして主に新聞社の場合、逮捕から起訴までは警察担当記者が取材し、裁判に入ると司法記者が担当するという役割分担があります。さらに裁判が何年も長引くと、その間にたいていの記者は異動して担当を外れてしまいます。

 つまり、事件の発覚から裁判の判決までを一人の記者が連続して追えることは、なかなかないことなのです。

 そこを、興味と時間さえあればフリーの記者は追い続けられ、しかも当事者(検察側も含めて)の肉声を聴いて事件の真相を確かめられる。これはやらないわけにはいきませんよね。もちろんお金も必要ですが、そこをなんとかするのがまたフリーのやりがいです。(そう思わないとやってられんというところでもあります ^^;)

3被告の公判から浮かび上がった「廃カツ事件」の全貌

 2016年1月に発覚した、いわゆる「ココイチの廃カツ」事件を覚えてらっしゃるでしょうか。

 その頃の僕は「東洋経済」をはじめとした出し先が徐々に増え、環境情報紙で食品ロスもテーマにしていたことから、「これはやらなきゃ」と思って稲沢市などの現場に通いました。

廃棄物扱いの冷凍カツなどを横流ししてスーパーに流通させていた愛知県稲沢市の産廃処理業者の工場(2016年1月19日、関口威人撮影/NAMEDIA)

廃棄物扱いの冷凍カツなどを横流ししてスーパーに流通させていた愛知県稲沢市の産廃処理業者の工場(2016年1月19日、関口威人撮影/NAMEDIA)

 廃カツを横流ししたとされる産廃処理業の経営者は、まだ警察に逮捕はされていなかったものの、徹底的に雲隠れ。僕はひたすら周辺の関係者や物証を追うしかない中で “隠し倉庫” とも呼べる場所にたどり着き、その意味や背景を含めて東洋経済に書きました。これは中日や朝日も追い掛けてくれるほどのインパクトがありました。

 そして同年10月から始まった裁判は、主犯格の経営者のほか、食品卸売業と仲介業の男を合わせて3人に対する公判がそれぞれ同時進行する展開になりましたが、僕はできるだけ裁判所に足を運んで傍聴しました。

 ただ、世間やマスコミの関心はとうに薄れてしまった感があり、判決が近づいても法廷でちゃんと聴いている傍聴者や記者は数えるほど。それでも僕は実際に見た現場の光景を頭に思い浮かべながら、3人それぞれの供述(中には食い違う部分も含めて)を組み立てて1本の記事にまとめました。

 今はコメント欄がなくなっていますが、当時「まるで映画になりそうな話だ」というコメントが付いていたことを覚えています。

 実は、フリーの物書きにとってアドバンテージがあるのは、まさにこういうことだと思うんです。

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