石黒好美の「書く福祉」・名古屋で生活保護申請をするとどうなるの?
4月からNPO法人ささしまサポートセンター(SSC)の常勤職員/事務局長として働いています。SSCは野宿生活をされている方や、いわゆるホームレス状態にある方、生活に困っている方を応援する活動をしている団体です。
以前の記事にも書いた通り、SSCにはたくさんの相談が寄せられます。
相談内容は人によってさまざまですが、生活保護申請に関するものや、生活保護を利用するといいのでは、と思われる内容のものがとても多いです。相談をいただいた方と実際にお会いして、SSCの職員やボランティアさんが生活保護申請に同行させてもらうこともあります。
そこで今回は、実際に生活保護申請ってどうやるの? という方法と、申請の同行を通じて見えてきたことなどをお伝えします。
※この記事では内容を分かりやすくするために、細かい説明を省いているところが多々あります。実際の手続きや保護の内容については、正確には必ずお住まいの市町村の生活保護の窓口で確認してください。
※記事中の手続きなどの内容は2026年7月時点の名古屋市の場合です。
※記事中で制度や世の中についてやいのやいの言っておりますが、これらは私個人の見解に基づくものであり、所属組織を代表するものではありません。
名古屋市で生活保護申請をしたいと思ったら
名古屋市で生活保護申請をしたいと思ったら、今住んでいる区の区役所にある「保健福祉センター福祉部民生子ども課」に行きましょう。(区役所の支所の場合は、「区民福祉課」へ)
申請のときに持っていくものは……特にありません。なにも持っていかなくても、身ひとつで窓口を訪ねても、生活保護申請はできます。ただ、可能であれば下記のものを持っていくと、手続きがよりスムーズに進みます。
・運転免許証やマイナンバーカードなど、本人確認ができるもの
・預金通帳(現時点での残高が分かるよう記帳してあるとなおよい。アプリでも可)
・今住んでいるアパートなどの契約書(家賃の金額が分かるもの)
住民票が別の市町村にあっても、いま名古屋市内に住んでいれば、名古屋市内で生活保護申請ができます。(名古屋市外で生活保護申請をしたい方は「○○市 生活保護」などで検索してみてください)
生活保護を利用できるのはこんな人
1)自分に一定以上の収入や財産がない
2)生計を同一にしている人(生活費を共同で出し合っていたり、同じ財布で暮らしている人)に、一定以上の収入や財産がない
3)自分が暴力団関係者ではない
生活保護を受けるために必要な条件は主に上記の3つです。要するに「自分に収入(給料、年金、仕送りなど)も財産(所持金、貯金、自動車など)もなく、金銭的に援助してくれる人はいない」という場合は生活保護が利用できます。若くても、働いていても、別居している家族に十分な収入があっても、いま収入や貯金がない、あるいは少なくて困っていたら、生活保護の利用が可能です。
「一定以上の収入」の額ですが、名古屋市で単身者(一人暮らし)の場合はひと月の収入が約11万円以下くらい、というのが目安です。
外国籍の方の場合は上記に加えて定住または永住など活動制限のない在留資格が必要になります。
Q 車を持っていたら生活保護申請はできない?
生活保護の受給中は、自動車の所有や運転は原則として禁止と言われます。通院や通勤にどうしても必要と認められた場合は許可されますが、実際には車の保有や運転がOKとされることは非常に少ないのが現状です。
だからといってあきらめないで、いちど生活保護の窓口で申請してみることが重要です。車を持っていても所持金がゼロ、または非常に少ないという場合は生活が成り立たないので「とりあえず生活保護申請を受け付けます。車をどうするかは後日、一緒に考えていきましょう」と窓口で言ってもらえることがあります。また、すでに就職が決まっていて、数カ月後に給料が出たら生活保護を利用しないで暮らせるようになりそう、という場合は無理に車を手放すように言われることはありません。とにかく、急迫しているときはためらわないで生活保護申請に行きましょう。
Q 役所ではどんなことを聞かれるの?
いまどれくらい収入や財産があるか、誰と住んでいるか、仕事はしているか、以前はどんな仕事をしていたか、健康状態はどうかなど、生活状況全般を確認されます。これは申請に来た人を責めたいとか、申請を断りたいからではなく、その人にどんなサポートが必要かを確認するための質問です。例えば「仕事はしていないのですか?」という質問は「働きなさい」と言いたいのではなく、単純に仕事をしているかどうか、給料はいくらくらいもらっているかどうか、あるいは、仕事ができないくらい健康状態がよくないのでは? ということを確認するためです。
なので、どうしても言いたくないことまで無理に話す必要はありません。ただ、お金に関することは隠さないで正直に話した方がいいかなと思います。(収入や財産を隠しても、役所の調査でバレます)
病院に行きたいとか、滞納している支払いがあるとか、困っていることがあればこちらから役所の人に伝えましょう。生活保護を利用すると医療費の自己負担はなくなりますが、必要に応じてそのための手続きを早めにしてもらえたり、悩みの解決に向けたアドバイスがもらえたりします。

Q 生活保護の利用を家族に知られたくないんだけど……
生活保護申請をすると、「扶養照会」といって基本的には「この人を扶養(援助)できませんか?」と確認する手紙が役所から家族に送られます。たとえ家族に莫大な財産があったとしても「できません」にマルをつけて返送すれば、ああそうですか、という感じでそれ以上は役所からは何も言われません。たとえ家族であってもその人を援助するか/できるかどうかはそれぞれの人が決めることであって、役所や他人がとやかく言うことではないですものね。
そもそも家族に頼れる人は先に家族に相談しますよね。それが無理だから生活保護申請しているわけであって、めちゃくちゃムダなプロセスだと私は思うのですが、役所としてはやらなければならないようです……。
ただし、家族からDVの被害を受けている場合など、絶対に居所を知られないようにする必要がある場合は配慮されますので、必ず申請のときに伝えてください。
Q 住所がない人(定まった住まいがない人)も生活保護申請ができる?
野宿生活をしている人、ホテルやネットカフェなどで寝泊まりしている人も生活保護申請はもちろんできます。
生活保護申請をしてから正式に決定するまでの期間は原則14日以内とされているので、この間、住まいがない状態の人は名古屋市では基本的には一時保護所という施設で過ごすことになります。名古屋市の一時保護所は原則として2~3名の相部屋で、生活保護申請をためらわせる一因になっています。
その後「居宅生活が可能」と役所に判断されれば、アパートに引っ越して暮らし始めることができます。敷金礼金などの費用も保護費から出ますし、家電などの費用も出ます。(上限額あり)
しかし、すぐには居宅生活はできないと判断されると、数カ月の間は生活保護施設で暮らすことになります。「居宅生活が可能かどうか」の判断は、金銭管理や健康管理ができるか、家事ができるか、対人関係でトラブルを起こさないかなどで判断されるとのことですが、明確な基準が公表されているわけでもなく……一時保護所に入った後、その人がどうなるかは、私たち支援団体としても分からない、という現状です。(過去に一人暮らしをした経験がある場合は、申請時にそのことをアピールされるといいのでは、と思います)
住所がない状態にまで追いつめられてしまった人の中には、精神疾患や精神障害を抱えている人が少なくありません。強い対人不安や聴覚過敏のため、短期間とはいえ相部屋や集団生活に耐えられないことが多いのです。
生活保護申請時に事情を訴えれば相部屋ではなく個室に入れることもあるのですが(なので、訴えましょう)、そもそも個室が空いていない場合などもあり、確実なことが言えないのが支援団体としても苦しいところです。(でも、訴えるだけは訴えましょう)
Q 検索すると「今すぐ入居できます!」という物件もあるけれど……?
これを避けるためには「住所がある状態」で生活保護申請をするのが一番です。「仕事の契約が更新されないことになったので、会社の寮を出なければならないが、次の仕事も決まらず行き先がない」といった相談もあるのですが、会社寮からでも生活保護申請はできますので、早めに役所に行きましょう。(転宅費用も保護費から出ます)
しかし実際にはすでに寮を出てしまっている方も多く、アパートを借りるためには収入(給与や生活保護)がないと審査が通らず、生活保護を受けるためには集団生活を強いられる、という状況に陥ります。
ネットで検索すると「すぐ入居できます」「生活保護申請もサポート」「保証人不要」といったサイトがいくつも出てきます。しかし、このような謳い文句を掲げる企業や団体の中には、劣悪な住居を相場よりかなり高い家賃で貸したり、家賃以外にも食費だなんだかんだとさまざまな費用を取って、生活保護費からほんのわずかな金額しか手元に残らない、といった施設に入居させるところが少なくありません。
見た目もきれいで説明も分かりやすいサイトの情報にひかれて、親切な不動産屋だと思って契約したら、実は貧困ビジネスだったということもあります。すぐに飛びつかず、家賃や毎月必要になる費用、物件の場所や設備、築年数や契約内容などをよく確認されることを強くおすすめします。
ちなみに、このような業者が不動産屋でなく「生活困窮者を支援するNPO」を名乗っていることもあります……。「ささしまさんも生活保護受給者を紹介して、不動産屋からマージンをもらってるんですか?」なんて聞かれたこともあります。私たちは相談に来られた方に、懇意にしている不動産屋さんや大家さんを紹介することもありますが、誰からも1円も受け取っておらず、相談も同行もボランティアでやっております……。
参考文献:山田壮志郎編著『Q&A生活保護利用ガイド 健康で文化的に生き抜くために』(明石書店)
福祉が市場に負けている
生活保護などについてより詳しい情報が欲しい方は、お近くの役所の生活保護の窓口に行っていただくか、ささしまサポートセンターに問い合わせていただいてもかまいません。
生活保護というほどではないけど、ちょっと苦しいので相談してみたいという場合は、名古屋市内の場合は「仕事・暮らし自立サポートセンター」へ問い合わせてみてください。(他の市町村の方は「○○市 生活困窮者自立支援」で検索すると近くの相談窓口が出てきます)
無料記事はここまでですが、生活保護申請のノウハウについての内容はこれ以降はありません。生活保護申請に関する情報を求めてこの記事にたどり着いた方は、お金を払ってこの先の記事を買っていただかなくても大丈夫です!(それ以外の方は、ぜひ買ってください)
