関口威人のDoローカルニュース解説 ④愛知・豊橋の新アリーナ問題ってDoなってるの?
大量に情報が流通するネット社会の中で、埋もれがちなローカル情報の数々。それらを地元ジャーナリストの視点で掘り起こし、責任を持って詳しく、分かりやすくまとめて解説します。
リコール署名偽造事件を取り上げた3回目以来、久々となる4回目のテーマは愛知県豊橋市の新アリーナ問題について。昨年11月、新アリーナ計画中止を掲げる長坂尚登市長が当選し、契約解除などを巡って市議会をはじめ市内外で議論が巻き起こっています。
そもそもどんな計画なのか、何が問題となっているのか、さらに筆者が追及してきた愛知県のアリーナ(IGアリーナ)との関係性や全国各地のアリーナ計画の問題を含めてまとめてみます。
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目 次
・230億円で公園半分を整備
・アベノミクスの時代に評価
・前市長の “変節” で混迷深まる【2025/3/31追記あり】
・愛知県のIGアリーナとの関係
・運営権対価「ゼロ」の意味
・「アリーナ問題」は全国に

新アリーナ計画のために解体が始まった豊橋公園内の野球場。契約解除を目指す長坂市政となって工事はいったん中断されている=2025年3月9日、筆者撮影
そもそもどんな計画なのか
豊橋市の新アリーナの計画地は、市中心部の豊橋公園です。市役所に隣接し、吉田城本丸跡などを含む22万㎡の敷地に美術博物館や野球場、陸上競技場、武道館などが点在しています。
その東側エリアの老朽化が進むスポーツ施設を集約し、一体的に整備しようというのが今回の計画。事業の正式名称は「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」で、アリーナも本来は「多目的屋内施設」の一部です。
詳しくは、推進派の市議らが制作したウェブサイトの画像(3月に開催された市民説明会ではチラシとして印刷・配布)をご覧ください。
230億円で公園半分を整備
概略として書くと、メインアリーナはバスケットコート3面分の広さに観覧席約5000席を確保。最新の大型ビジョンや音響設備で大規模なコンサートにも対応できるとします。サブアリーナはバスケットコート2面分、観覧席約200席です。
アリーナに隣接して武道館と弓道・アーチェリー場を整備。その周辺に16面のテニスコートや相撲場、多目的広場、こども広場なども造られます。約400台分の無料駐車場は、同程度の台数分を分散配置した上でキャッシュレス決済などによる有料駐車場とする計画です。
事業費は約230億円を見込んでいますが、国の補助金などで実質的な市の負担額は約160億円とされています。30年間の維持管理・運営費は民間事業者が独立採算で賄うため、市の負担はゼロ。民間のノウハウによる質の高いサービスが提供され、地域経済の活性化につながるとともに災害時には防災活動拠点となるなどのメリットがあると市当局や推進派の市議らは強調します。
しかし、そこに大きな疑問を投げ掛ける市民が少なくありません。いったい何が問題とされているのでしょうか。

新アリーナの計画を推進する市議会会派の議員らが市民向けに行った説明会=2025年3月9日、豊城生涯学習センターで筆者撮影
アベノミクスの時代に評価
話がこじれている理由の一つは、歴代市長の対応です。