永谷正樹の「俺の写真をパクるな!」その5・ナガヤ、少額訴訟を起こすってよ。

 フードカメラマン兼ライター(株式会社つむぐ代表)の筆者と “写真泥棒” との戦い、新たな展開へ。
なごやメディア研究会 2024.10.19
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 2021年の年末、年明けが〆切の原稿の執筆に追われていたときに、取材をきっかけに広告撮影の仕事をいただいた味噌煮込みうどん店の専務から電話があった。とても慌てた様子だったので、話を聞いてみると、

 「ちょっと大変なことになっていまして……。ウチがナガヤさんにお願いして撮ってもらった写真が無断で使われているんですよ。写真を撮るために昼休み返上で料理を作って準備したことを思うと悔しくてたまりません」と、とても憤っていた。

弁護士から連絡した直後に写真を削除

 無断使用していたのは、スーパーにも商品が並んでいる製麺会社。あろうことか、私のクライアントの味噌煮込みうどんの写真を自社の商品のイメージとして自社のECサイトとふるさと納税サイト、さらには通販のチラシに使用していたのだ。

 その後、いろいろあって、いや、ありすぎて紆余曲折したが、知財専門の弁護士に示談交渉を委託したおかげで、解決の道が見えてきたところである。読者の皆様は気になるだろうが、今回の話題はこの製麺会社ではない。

 実は、無断使用が発覚したときに同じ味噌煮込みうどんの写真をGoogleで画像検索したところ、名古屋市内の居酒屋がグルメ情報サイトと、観光情報サイト、旅行予約サイトでこれまた勝手に使っていたことがわかったのだ。しかも、グルメ情報サイトに使われていた写真のすぐ下に「2018/08」と日付まで入っていた。つまり、写真は3年半以上にわたって掲載され続けたのである。

グルメ情報サイトに使われていた私の味噌煮込みうどんの写真。下に「2018/08」とあり、3年半以上も無断使用されていたことに気付いた。しかし私の弁護士が運営会社に連絡すると、すぐに削除された

グルメ情報サイトに使われていた私の味噌煮込みうどんの写真。下に「2018/08」とあり、3年半以上も無断使用されていたことに気付いた。しかし私の弁護士が運営会社に連絡すると、すぐに削除された

 ちょうどその頃、製麺会社による写真無断使用の件を相談していた弁護士にその案件もまとめて依頼することにした。弁護士が最初に行ったのは、居酒屋を運営する会社を特定することだった。

 ネットを頼りに調べると、求人サイトに載せた広告がヒットした。弁護士が広告に書かれた運営会社と思われる会社に連絡すると、そこは居酒屋から依頼されたコンサルだった。しかし、その後すぐにグルメ情報サイトから私の写真は削除されていた。コンサルから連絡が入って、慌てて消したのだろう。言い換えるなら、自らに非があることを認識していたということになる。

弁護士からの連絡を悉く無視

 その後、弁護士は内容証明郵便による通知を行った。つまり、著作権侵害を犯していることと、本人(ナガヤ)の代理人として弁護士が交渉することを相手方に伝えるのだ。

 製麺会社はすぐに弁護士を通じて通知に対する反論があったが、居酒屋、正しくは運営会社からは何の音沙汰もなかった。

 無断使用が発覚して2年が経った頃、わけあって弁護士を解任せざるを得なくなった。そして前出の知財専門の弁護士に委託することになるのだが、居酒屋運営会社に内容証明や特定記録郵便、書留郵便で連絡を試みるも悉く無視された。さらには弁護士は何度も店に電話をして従業員に伝言と折返し連絡がほしいという旨を伝えたが、それも無視。ついには弁護士から

「残念ですが、任意交渉としてできることは尽くしたと思います」と言われてしまった。要はサジを投げてしまったのである。

 連絡を取ってもらっている途中、弁護士から調停を進められた。たしかに調停を起こすのも一つの方法である。実は15年ほど前に子ども同士のトラブルで相手の親と話し合いが難航して、調停で解決を試みたことがあったため、私にとって調停とは身近な?ものだった。

 しかし、調停には強制力がないため、欠席したとしてもペナルティを課されることはない。今まであれだけ内容証明や電話で連絡をしても無視することができるのだから、調停を起こしても同じ結果となり、ただ徒に時間が過ぎていくだけなのではないかと思って諦めた。

 と、なると、私に残されたのは訴訟しかない。とはいえ、訴訟となると弁護士に支払う金額も膨大になる。賠償金でペイできるならまだしも、その保証はどこにもない。もう、いっそのこと諦めようとも思ったが、写真を勝手に使われたことよりも、無視されたことがどうしても納得がいかず、どんな方法を採ればよいのかずっと考えていた。

生まれて初めて書いた訴状

 9月末、Googleで「著作権侵害 訴訟」を検索したとき、少額訴訟を起こしたカメラマンのブログに辿り着いた。少額訴訟とは、賠償金60万円以内でその日に判決が出る。裁判には変わりないため、被告が来なかったら欠席裁判となり、原告の主張が100%認められる。私はこの少額訴訟に懸けてみようと思った。弁護士を立てることもできるが、やはり報酬も高額になるため私一人で行うことにした。

 少額訴訟を行うには、まず訴状を作成して裁判所へ提出せねばならない。訴状と聞くと、専門用語や独自の書式があるように思うが、ネットにはテンプレが山ほどあり、意外と簡単に作ることができた。

 読者の皆様もいつ何時にトラブルに巻き込まれるかわからないので、私が実際に書いた訴状をPDFで閲覧できるようにしておく。あ、もちろん、私や相手方を特定できる個人情報は伏せ字にさせてもらうことをご理解いただきたい。(以下、画像)

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