記者会見で「NG」なのは誰?<再考>フリーは汚名返上できるか・関口威人の「フリー日和 (⌒∇⌒)□」その22

 フジテレビ問題を踏まえて考え直しました。
なごやメディア研究会 2025.02.08
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 フジテレビを巡る10時間半の会見で、また記者会見のあり方が注目されるようになりました。特に今回はフリー記者の「態度」や「質」が問われていますので、僕も(フジ会見には出ていませんが)当事者の端くれとして思うところが多々あります。

 そこで、ジャニーズ問題をきっかけに書いた記事をベースにしながら、記者会見のあり方を再考します。前回の記事は期間限定で無料公開(メール登録も不要)にしましたので、よろしければそちらも合わせてご覧ください。

フリーが会見に出るのは何のため?

 さて、フジテレビの記者会見には400人以上が参加したそうで、普段はあまり一般的な会見(少なくとも首相や大臣会見など)で見かけないフリーの記者も質問をしていました。

 参加する動機や立場はさまざまだったと思いますが、僕の経験から考えても、だいたい以下のようなパターンに分かれていたのではないでしょうか。

 ① 自分の関心(専門)分野であり、発表するあて(媒体)もあった

 ② 関心や基礎知識は多くないが、出版社などから依頼されて行った

 ③ 関心や基礎知識はあるが、(個人のSNS以外)発表するあてはなかった

 ④ 関心も基礎知識もなく、入れるものなら入ってみようと思った

 もちろん①が基本だし、そうあるべきだと思います。しかし、関心がなくても仕事として頼まれて行く場合も、プロだからこそあり得ます。

 今回、一番の注目を集めてしまったフリーの横田増生さんも、実はあるメディアからの依頼で参加したと明かしています。そして普段(兵庫県知事会見などで)はほとんど質問はしないけれど、今回のフジ会見では幹部たちの責任逃れのような発言の連続に「バチっと火がついて」、怒りの質問をしてしまったそうです。

 その経緯や思いについては、本人が以下の動画で話されています。なるほどなーと思える部分もあれば、うーんと感じる部分もありますが、本人も今回の一件で「ジャーナリストが全部ダメだ、フリーだからダメだと言われると、それは(自分が)悪かった。違う」と反省の弁を述べられています。

 他の2人(やはり今回の会見で注目された新進ネットメディア「The HEADLINE」編集長の石田健さんと元毎日新聞記者でノンフィクションライターの石戸諭さん)の意見やコメント欄の書き込みも興味深いので、お時間あればぜひ見てください。

あるべき会見参加者の優先順位

 問題は③④の人たちであるように思えます。ただ、そこも事情はさまざま。もしこれが東海テレビの不祥事で、名古屋でフルオープンの会見があるとなったら、僕も(関心は多少あるにしても)「入れるものなら入ってみよう」と考えて行ったことでしょう。

 そもそも僕がフリーとして会見に通うようになったのも、名古屋市の河村たかし前市長が就任し、里山開発などで話題を振りまいたから。最初は市長に直接見解などを問いただすため、「記者クラブの壁」をこじ開けながら入りました。でも、普通に入れるようになってからは、自分の関心のためだけではなく、「入れるものなら入っておこう」という気持ちで通っていたことは否めません。

 しばらくは書く媒体も定まっていなかったので、会見に参加しても必ず記事にするわけではありませんでした。でも、数カ月や数年経ってから雑誌の記事にしたり、書籍に反映したりすることもありました。

 逆に特定の媒体にしばられないからこそ、内容によって「この話ならこの媒体に」と判断し、できるだけ関心のありそうな層に情報を届けるのがフリーの存在意義だと思っています。

 とはいえ今回 “開かれ過ぎた会見” がこれだけ問題になった以上、今後はフリーに優先順位を付けられることは覚悟しなければなりません。

 僕はもともと、会見の参加条件に一定の線引きは必要だと考えてきたのは前回書いた通りです。それは「政治家の会見なら、政治活動をしていない人」など、合理的に説明できる最低限の基準であるべきだと思っています。そういう意味では、新党「再生の道」を立ち上げた石丸伸二氏が示している会見参加条件には、まったく納得がいきません。

 ただ、今回のフジテレビのようなケースは本当に難しいところ。利益相反的な基準で考えて、フジの社員記者を入れないのもおかしい。YouTuberは確かにピンキリですが、100万登録ならマトモとはまったく思えませんし、横田さんの例のように「火が付く」か付かないかは、その時、その場でないと分かりません。(マスコミ記者でもキレる人はキレます)

 いま僕が考えられるのは、優先順位を付けるなら上記の①②③④の順にすることぐらいです。②は媒体の力にもよりますから、個人としては①に近づくよう、日頃から見識や専門性を高めて媒体を通して発信し、フリー同士でも切磋琢磨していくしかないと思います。

「文春頼り」の是非と記者クラブ問題

 ところで、今回は「文春報道に頼る」ことの是非もクローズアップされました。文春が「しれっと訂正」を出したことから、なおさら「文春を真に受けて質問をした記者はけしからん」という見方もされているようです。


 これは一般に誤解されているのかもしれませんが、普通にあることです。むしろ、それが記者会見を開く意義であるとも言えます。

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