関口威人の「フリー日和 (⌒∇⌒)□」その24・僕の事件取材の表裏

 フリー稼業17年の裏側を明かす連載。今回は主に “週刊誌記者” として動いた取材活動を振り返ります。
nameken 2025.11.15
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「26年前の事件で容疑者逮捕」を受けた動き

 先月末、26年の時を経て動いた名古屋市西区の主婦殺害事件。殺人容疑で愛知県警に逮捕されたのは、被害者である高羽奈美子さんの夫・悟さんの高校時代の同級生だったとして、二重の衝撃が走りました。

 今月1日のニュースレターでお伝えした通り、僕はこの事件を直接取材する機会はこれまでありませんでした。しかし名古屋に来て約20年、たまたま現場からそう遠くないところに住み続けた一市民として、ずっと心に引っかかるものがありました。

 逮捕の一報が流れた当日の夜、あらためて現場や過去の新聞記事などを確認していたところ、東京の編集者から「関口さん、取材できますか?」と連絡が。土曜日で、(上述のなメ研ニュースレターを書く以外には)予定が入っていなかった僕は、二つ返事で翌朝一番、西区の現場へ。結果的に僕の現場取材の原稿と、5年ほど前に悟さんを直接取材していたライターの原稿とをかけ合わせる形で、週刊誌としては速報的なデジタル版の記事が公開されました。

 ただ、ちょっと編集側とのすれ違いもあったので十分な取材にはならず、僕の中でモヤモヤが残りました。そこで、頼まれはしなかったのですが1週間後の7日昼過ぎ、ダメ元のつもりで高羽悟さんの港区の自宅をアポなしで訪ねると、ちょうど本人がテレビ取材を受けた後、西警察署に行くところだといって出てきてくれました。そして、夜に「もう1本テレビ局の取材があるので、それが終わる8時ぐらいからなら対応できますよ」と言われました。

 僕は港区周辺で別件を済ませながら待機し、夜8時に再び悟さん宅を訪ねたところ、家の中に上げてもらい、短時間だけ一対一でお話を伺えることになりました。

容疑者逮捕から1週間後の夜、名古屋市港区の自宅で取材に応じてくださった高羽悟さん=11月7日、筆者撮影

容疑者逮捕から1週間後の夜、名古屋市港区の自宅で取材に応じてくださった高羽悟さん=11月7日、筆者撮影

被害者の夫・悟さんのメディア対応に敬服

 皆さんお察しの通り、悟さんは基本どんなメディアの取材も断ることなく引き受けています。それはメディア・マスコミの協力がなければ事件は解決できないと思ってきたからです。

 今回の容疑者逮捕後も、あらゆるメディアが取材に殺到し、その一つ一つに丁寧に応えています。悟さんによれば、ほとんどの記者はきちんと取材して気遣いも見せてくれるけれど、ある週刊誌系のフリーだという記者は「私の話をろくに聞かないで、まったく分かってないような取材をしてきた。ゲラが送られてきたら間違いだらけで、それを明日までに全部チェックしてくれと。久々に厄介な記者に当たってしまった」といいます。他山の石にしなければと、気を引き締めました。

 だから僕はこの日、挨拶程度でいいと割り切っていました。今さら僕がこの26年間を穴埋めしようとしても無理ですし、フリーはやはり警察取材に限界があります。むしろ裁判で被告ら当事者の肉声を聞き、事件の全容を正確に浮かび上がらせるべきだと考えてきたのは以前に書いた通りです。

 

 そこで僕は最低限、裁判に向けた対応や思いだけを確認させてもらおうとしました。悟さんは「すべて認めて一審で終わらせ、早く刑に服してほしいと思っていた」としながら、このときには容疑者が取り調べで黙秘に転じていたことを知っていて、「どうもそうはいかないようだ。長くかかることも覚悟している」と話されました。

 他にこちらから聞くまでもなく、今の心境や今後の予定などを端的に語っていただき、写真撮影にも応じてもらえました。僕は最後に奈美子さんの遺影が飾られている仏壇に手を合わせ、引き揚げることに。悟さんは「1週間、食事もろくに取れないぐらい大変だったけれど、とりあえずこれで最後ですよ」と笑顔で見送ってくれました。

 この経験は、ヤフーニュースでのコメントなどに反映させてもらうことにしました。

事件取材における新聞と週刊誌 “文化” の違い

 ところで、一般的な事件取材に対して、僕は決して積極的な方ではありませんでした。

 新聞社時代は支局や社会部で警察担当をしましたが、ガンガン警察に食い込むようなタイプではなく、むしろ警察取材には疑問を持って一歩引いてしまう感じでした。

 それでも、最低限やるべきことはやってきたつもりで、県警担当になることも覚悟はしていたところ、文化部に異動となり、それからいろいろあって退社することになりました。

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